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精神保健福祉法を改正せよ
今まで曖昧にされていた事が、ある一人の介護福祉士の報告によりメディアに流れました。
先日からメディアに大きく取り沙汰されているぶるーくろす癒海館(介護施設)の問題。この問題は、そもそも入所者を手錠や檻で行動制限をしているという、元職員(介護福祉士)の通報によるものであったが、その経過から有料老人ホームとして届け出もされていなかったという事がわかり「どこまでを老人ホームとするか」などくだらない定義の水掛け論が世間で飛び交った。
ニュースによると、一人でも老人以外が(つまり若年の障害者等)が入所しておれば、それに該当しない。とか、一人でも老人が入所していれば老人ホームとして該当する。などという各施設によって違う見解が乱立している。この無届けの問題もみなおす必要があるが、ここではひとまず触れないとして、
ぶるーくろす癒海館の元職員(介護福祉士で今回の通報者)は、ニュースの取材で
「私は、介護のプロだ。」との意見の後、現場介護士の少ない人数の現実と手錠や檻での虐待が起こったことの問題を絡めて、興奮しながらも論理的に話していた。
プロであるから虐待を浦安市に通報したのだろうが、残念ながら、それ程の正義感がある方であれば、大概の施設のあり方に疑問を感じ、働くところほとんどで通告しなければならないだろう。もし、この介護福祉士が問題の多さや強弱で判断し通告しているのであれば、「私は介護のプロだ」との発言は認めがたい。介護場面であれば、多かれ少なかれ患者・入所者への暴言や身体拘束の問題、他にも、何らかの違法性が見られることが少なくない。だとすれば、その介護士は行った先の職場で全て違和感を感じ通報か、退職をせざるを得なくなる。これが、軽い問題だからと報告しないのであれば、そこには強い矛盾が生じる。おそらく、今後もその葛藤が続き、問題を打開できないまま現場で苦しむのではないだろうか。
檻や手錠だから通報したのか。
不必要と判断される行動制限であっても、規定の拘束帯をしようしていたケースならどうしていたのか。
私は、その判断基準に疑問を感じる。手錠であれ、規定の拘束帯であれ、患者自身は不当な行動制限を強いられているのであるから、そこを基準にしてはならないはずである。
また、ぶるーくろす癒海館の責任者代行はこのようにいう。
「バルーンカテーテルを挿入している人もおり、仕方なく拘束をした人もいる。」と
この責任者代行の人権意識の浅さには驚いたが、根本は、それを容認している日本の法律の不備が最もたる要因であろう。
浦安市のコメントも同様「不必要な拘束があったかどうか、調査する」という旨の発言。その基準を判断する方法すら明確にないうえでのこの発言には驚くばかりである。だいたい、今回の問題で、浦安市も国も、そしてメディアも着目する部分が、利用者の行動制限にかかわる法的な問題などではなく、施設の手続き上の問題で盛り上がるなど、行動制限に関する世間の認知度の低さが証明されたといえよう。
私は以前から、精神保健福祉法の矛盾を指摘している。この法律は、精神科病院にのみ適応であるかのような文言が盛り込まれており、行動制限、つまり、身体拘束や隔離に関しても精神保健指定医(基本的には)の診察と判断のもと必要性を判断して実施してもよいとされている。その時点で大きな矛盾が生じているのだが、精神科以外の病院では、その必要性は強要されておらず、同意書までにとどまっている。
精神科病院以外でも、精神疾患を有している患者は山ほどいるし、精神科病院以外で治療中にせん妄などが出現して身体拘束を余儀なくされる患者もいる。
そもそも、精神科病院と限定しているところに法の矛盾が生じているのであり、精神科病院にしかいない(ほとんど)精神保健指定医にその義務を負わせるというこの法律の解釈には必然的に限界が生じる。
今回のぶるーくろす癒海館の行動制限・虐待の問題は、手錠と檻での行動制限で外見的・ニュース的に目立つ材料となったため、クローズアップされたが、実際、不要な身体拘束や隔離による問題は、日本中の介護施設(もちろん一部であると信じている)や精神科病院、他科でも堂々とその違法性や矛盾をしらずに、「仕方ない」の一心で同行為が繰り返されているのではないだろうか。
さらに、精神科病院では、治療上の拘束であれば指示を必要としないなどという、都合のよい解釈で、暗黙の了解としてまかり通ってきた部分がある。
“治療上”ということばは、身体拘束・隔離においては、どのようにでも解釈できる危険な言葉であり、即刻厳罰に取りしまる法整備を整えるべきである。
今回の問題を機に、対象者の人権を守れる環境に整備しなおし、医療従事者の意識変革のきっかけとすべきである。
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