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退院後の患者と出会って
今日は、看護師国家試験予備校の初の講師としての講義が無事終了しました。ゆっくり理解されるように説明しなくてはいけませんし、かといって重要な部分を省いてもいけない。国家試験の出題傾向もこちらが把握し、生徒に安心させてあげなければならない。最低限重要なところを教えて、後は付属で説明していく。なかなか、むつかしい事で、ほんの少しむつかしい事をや面白くない事を話すと、生徒の顔が如実に表現されているのがわかり、変な汗が出ました。教科書どおり教えることのむつかしさを実感した一日でした。まだまだ、先輩講師にくらべると、当然のことながら比べのもにはならない力ですが、少しでも追いつけるように頑張らなければと思っています。初日でありながら、無駄話が過ぎて、予定のところまで解説できず、反省です。教科書以外の話になるといくらでも喋ってしまいそうになるのが、悪い癖ですかね。今日は、その予備校の行きと帰りに駅でであった患者との話を少ししようかと思います。
予備校へ初講義に向かう前、リラックスするために到着した駅のトイレへ向かった。用をたし、心構えができ、何となくリラックスできた思いになり、チラッと横を見ると、どこかでみた事がある人。
めがねをかけ、退院前とは違った様子で無精髭が生え、ジャンバーとズボンはなぜか少しの泥がついている。以前より日焼けをしたのか、汚れているからか、それすら見分けのつかない皮膚の変色の仕方。明らかに活気はない。
声を掛けようか、かけまいか・・・、迷ったが、活気がなく路頭に迷っているようにも見えたので、思わず声を掛けた。
私、「○○さん、」
退院前とは、あまりにも風貌がかわってしまっていたので、自信がなく、後ろから何となく呼んでみた。
○○さん「あ、」
と、返事をされる。
○○さん「あの~、○○病院の方ですよね~。名前なんでしたっけ」
患者へは、名前をしつこくいうほうであるが、私の対応が悪かったのか、印象が薄かったのか、名前を忘れられていたようで、
「越智ですよ」
と説明。
どこへ行くようにも見えなかったので、
越智「うまくやっていけてますか?」
というと、
○○さん「はい~、これから同級生と食事をするところです~」
越智「連絡はとれたんですか?」
○○さん「いえ~、これから電話をするところです~」
失礼かとは思ったが、とても身の回りの事が出来ているようにも見えなかったので、金銭について、質問をした。
越智「お金はいけるんですか?きちんと管理できてます?」
○○さん「はい~きちんとボランティアのかたに、管理してもらってます~」と。
以前、浪費癖のあった方で、その点はすごく気になったが、毎日使いすぎないように管理してもらっているとの事。友人との待ち合わせも、本当のことなのか気にはなったが、確かめる理由も時間もなく、
越智「最近、眠れてます?無理したらダメですよ」
○○さん「いや、最近ねむれないんですよ~。昨日は一睡もしてなくて、気が狂いそうでした~」
トイレで人が出入りするなかで、会話が聞き取れないように配慮したつもりであったが、○○さんは、気に留めない様子で大きい声で話す。いくらも年上の○○さんと、どちらかといえば若い、ジーンズに多少若い格好をしている私の会話は明らかに目立っていた。そこに、“気が狂いそうでした”の一言があったので、さすがに、周囲の目を気にしてしまったが、私の気持ちは、それよりも、○○さんが、きちんと生活できているかの方が優先した。
多少のお金を渡そうかと、余計なおせっかいも考えたが、色々考えた結果、必要無いと判断し、無理をしない事だけを、言葉だけではあるが、伝えてトイレを後にすることにした。
講義前の緊張と不安がありながらも、なぜか側でついておいてあげたいという心配。○○さんからすれば余計なおせっかいだろうが、明らかに、やつれ方をみると今後の経過が心配される状況であった。
初講義は、事務部長が見学するというかなり緊張する状況の中、内容はともあれ時間一杯、10分くらい超過したか、終えることが出来た。生徒からのクレームが心配なところであるが、それは、今後も迷惑をかけないように努力するしかないという事で、事務の人と職場を後にした。
越智「じゃ、この辺で、トイレ行ってから電車乗りますんで」
後で思えば、トイレに行くということを、女性の事務員さんに伝える必要もないのにと、相変わらず女性への配慮の出来なさを反省しながら、事務員さんと解散し、行きと同じ駅のトイレへ向かう。
ようやく初講義が終わったというストレスの開放感をトイレで味わって、ふと横を見ると、どこかで見た顔が。
全くさっきと同じ、○○さんである。
内心、本当に友人と食事に行ったのだろうかと疑いの眼を持ちながらも、
越智「友達と食事にいけまいた?」との言葉かけ。
○○さん「はい、いってきました~」と
2回も、しかも、一日のうちで同じ場所で出会うというのは天文学的な確立。当然、“周辺でうろついて、この駅のトイレを頻繁に出入りしているのではないか”との疑いを持ったが、それよりもまず、
越智「食事終わったんでしょ?この後、どこか行くんですか?」
○○さん「いえ、予定はありません~!」
一瞬、眼が見開いたので、私が紛らわしい質問をしてしまったのではないかと、申し訳なく思った。
越智「家にTVあるんですよね。最近の番組面白いから、寝転んでゆっくりみたらリラックスできますよ」
これだけで、解決するわけもない言葉かけであるが、すこしでもリラックスしてくれればとの、必死の一声。
少し笑みがこぼれ
○○さん「はい、わかりました~」
あいかわらずの特徴のある話し方を耳にしながら、開散する。
この○○さんは、ほんの1週間ほど前、当院に退院後、元気な姿で挨拶に来ていたのだが、その風貌とは打って変わって、ホームレス同様の格好になっていた。
調子が悪くなったら、すぐに受診するようにということは伝えたが、その辺を判断する事が出来ないのが、疾患の特徴であって、もう少しなにか助けられる事があればと、本人からすれば余計な御世話かも知れないが、10年ほど、医療業界に従事して、初めての特別な出来事であった為、ここに報告してみた。今後の○○さんの経過が気になるところである。
しかし、初講義終了という事もあり、焼酎を飲みながらのブログ更新。さすがに美味しい!
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