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精神科疾患への誤解~解離性障害とマスコミの問題等~

投稿日:2007/08/21

あまり触れるつもりのなかった話題ですが、これほど問題となると世間も大いに誤解してるでしょうし、精神科医療のもろさを露呈した形にもなっているので、少しでも多くの人に理解していただくために、私なりの見解を述べておきたいと思います。

最初にこれを見ていただいて
 


今、マスコミで騒がれている朝青龍の問題。4人目の医師による診察で「解離性障害」との診断を受けた。

これを受けてマスコミはこぞって診断の違いに触れた。直接診断の違いに言及することは少なかったものの、視聴者からすれば

「なぜ、ここまで診断が違うのだろう」

との疑念をもつに違いない。

1度目の診断は、うつ病の一歩手前
2度目は急性ストレス障害
そして、今回の3度目の診断が解離性障害と診断されたという経過があり、この朝青龍の診断名が3回とも違っていた点に疑問を持つのは当然のことだろう。


ここで、私なりの見解を出しておきたい。

一度目の診察の時は、なんとか会話ができていたということから、専門的に診察できていたかは別として、明らかな誤診であったとはいえない。また、2度目の診断が下された時も、親方が数回面談していた時の情報から朝青竜の状況は、さほど変わっていなかた(外見的には)と思われる。

ところが、角界はここで大きな失敗をおかした。この時に適切な対応をとっていれば、朝青龍の病状はもとより各界や精神科医療全体にも問題を残すことはなかったはずである。


そして今回、3度目の診察で解離性障害と診断されたわけであるが、この疾患は、これまでの疾患とは明らかに違う。症状の類似点が少ないのである。

ここで考えてみたい。3度目の診断は医師の誤診か、それとも過去二回の医師の診断が間違っていたのか。




いずれでもない。





ただ単に、朝青龍の病状が悪化しただけである。
今は、「ウー」であるとか「アー」であるとか思い通りに声が出せない状況であるという。これが本当であれば、ほぼ解離症状が起こっていることは間違いなく、日常はどうかというと、なんとか手渡した薬に手を出し飲むことができたり、あるいは茫然とTVを見ているだけだという。
一つ心配なのは、どのくらいのADLあるいはIADLがあるのかということ。現在の朝青龍は差し出された食事をなんとか食べる程度だということであるから、入浴や排泄などもどの程度可能なのか気になるところである。今はそうでないにしても、悪化すればその辺の心配が現実となることもありうるだろう。

私は、8月初旬ブログで、病気の治療を優先するため一刻も早く帰国することを訴えた。急性ストレス障害かそれに類似する状態である以上、精神論云々を議論している場合ではなく、取り返しがつかなくなると。また、診断自体が比較的重い疾患でないからと油断していては、かならず症状の重い疾患に移行する可能性も十分にあることも述べた。もちろん、私の予想通りにならないことを願っていたし、これ以上朝青龍の記事を書くこともないと思っていた。

ところが懸念していた事態となり、さらに8月21日付の記事ではストレスの軽重では急性ストレス障害より軽い解離性障害に当たるとしているとし、解離性障害を完全に軽んじた発言。

確かに“ストレス”そのものを無理に数値化したとすれば、文献上はその通りかもしれない。ただ、双方の疾患名を比べてみても、双方の疾患でも重症と軽症があるのは当然であり、一言で語れるものではない。いや、語ってはならない。少なくとも、その記事を読んだ者は大いに誤解することだろう。このままでは、解離性障害が重症化し社会復帰は不可能となるばかりか、さらに重い疾患に移行する可能性も否定できない。



昨日、ようやく医師が帰国のすすめを発表したが、専門家であれば帰国の時期を逸しているのは自明のこと。
前回の記事同様繰り返し言うが、






※いつまでこの拷問を続けるのか。





確かに、横綱としての立場もあろう。示しがつかないということもあろう。ただ、それを優先するがあまり、一人の人間の人生を狂わせることになることは関係者は自覚しておくべきである。そして、医師もただ帰国をすすめるというだけでなく、帰国のすすめが遅れたこと、そして今帰国させることの重要性を医師のプライドにかけても主張すべきである。

この問題の裏には、モンゴルと日本との文化の違いが大きく影響していることも理解しておくべきであろう。また、今頃になって“示し”を誇示するまえに、今まで朝青龍への処分を甘くしていた各界は反省大いにするべきである。過去の“つけ”を今頃取り戻そうと、そのような対処をしたがために出た被害者が今回の当事者「朝青龍」なのである。











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