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保護室の患者を開放に導く ~水中毒と抗精神病薬との関係~
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水中毒
短時間で大量の水分を摂取してしまい体の電解質のバランスが崩れる。水中毒は、痙攣(けいれん)や脳浮腫までも惹起し、命の危険すらある。
そのため、顕著な水中毒の患者は行動制限を強いられることも少なくない。つまり、保護室(隔離室)によって行動を制限し、身体の安全を守るという方法である。
隔離は患者の自由を著しく制限することになるので、何とか避けなければならない。しかし、それに代わる方法がなければやむを得ず長年にわたり隔離をせざるを得ない状況に置かれている患者も少なくない。
そのような患者の人生の転換を図るべく、長年保護室に入っている患者を解放に導く取り組みを行っている。
取り組みは容易ではない。ある程度の仮説を立てて関わることから始まり、医師との十分な話し合いができるという大前提と、病棟スタッフの協力。なにより本人の心の片隅にでも保護室から出たいという気持ちを感じられることに意味を感じたりもする。
スタッフから、「飲んじゃ駄目!」と言われながら、飲んではいけないということは分かっているがやめられないという苦しみ。
・思考がまとまらず保護室のトイレの水を飲む。
・口渇に耐えられず、自らの尿を飲む
しかし、これは主病名の統合失調症が原因でなっているというよりも、これを治療するために内服している抗精神病薬が原因であるという目算が強い。
何とかして患者を保護室から出てもらわなければならない。
まず、長年飲み続けていた抗精神病薬の見直しを行った。
ジプレキサやリスパダール、コントミンなどの混合処方、ここに水中毒の根源があると判断し、主治医と意見交換。
本来ならば、混合処方についても、根拠のない無用なプライドのみを持っている医師がその道を阻むのであるが、幸い理解を示す医師であったのでスムーズに話が進んだ(このように意見を聞いてくれる医師がいることはありがたい)。
減薬し、単剤化を進めているがむしろ現状のほうが調子がよく、見事に水の飲む量が減っている。
それだけではなく、水中毒を解決するにあたって過剰なストレスを与えないように、精神的なサポートや入院生活の充実も無視できないため、並行して行っていくことが重要であることは忘れてはならない。
現在、当該患者は日中は保護室からでて過ごすことができている。
今度、私が夜勤のとき始めて一般病床で夜を過ごす予定である。
はたして、水中毒のために長年保護室で暮していた患者は人生の転機を迎えることができるのだろうか。
自己満足の看護に陥ることなく、正面から医療・看護・患者に向き合って一つ一つの問題に向き合っていきたい。
これを見ても尚、看護師が医師に意見をするべきではない、越権行為であると豪語する医師や看護師他、医療スタッフや地域の人間がいるとすればこれは今まで築いてきた精神科特有の悪習にほかならず、なによりこの悪習を打開することが患者を救うことになることを自覚するべきである。
我々看護師は、患者に最も接する時間のある職種である。この職種から情報を収集することの重要性を認識している医師は本当にありがたい。看護師も「医師の指示だから」と医師の指示は完全なものであるという幻想は抱かず、我々が関わって“看て”“聴いて”“感じた”われわれの観察力を積極的に提供し、治療方針の一材料として活かさなければならない。医師にもその必要性を理解してもらいながら良い関係を気づいていきたいものである。
これが、最終的には患者を良い方向に導くことになるのだから・・・
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