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精神疾患の診断名を個別に考えるには、もう限界がある。

投稿日:2013/02/14

今日もしつこく、精神疾患の診断概念と治療の問題について書いてみる。



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以前から指摘している、診断概念の問題であるが、
ここで再度説明しておきたい。


精神科で取り扱う疾患で、有名なところで言うと
統合失調症、躁うつ病(単極性障害も含む)、解離性障害、発達障害、アルコール依存症、強迫性障害・・・

他にもたくさんあるが、ひとまずこのくらいを例に挙げるとして―


これらの疾患を、いまだにそれぞれを独立した概念として診る医師が少なくない。
これは、世界的操作的診断基準であるICD-10やアメリカ精神医学会のDSM-Ⅳ-TRによる影響が大きいのかもしれない。

「あなたは発達障害じゃない。」
「発達障害に統合失調症が合併した。」
「統合失調症の前駆期だ」


NPOの活動の中で、そのように言われたという相談者を多く見てきた。

重要なのは、発達障害の傾向が強いか、どの診断名の症状に“近いかどうか”を判断するところにあるのに、多くの医師はどの診断名なのかということに白黒をつけたがる(もちろん、現行の診療報酬制度の中では、仕方なく診断名をつけなくてはならないが、その問題とは別に考えてほしい。)。



そもそも、人間の精神活動というものは、

・無数の神経
・ホルモン
・外部環境
・遺伝子の脆弱性

これらが複雑に絡み合った結果、表現されたものなのだから、
いわゆる病的とされる幻覚や妄想なども、そのアンバランスから生じるものと考えると、

「どの妄想が発達障害の二次障害で、どの幻覚が統合失調症のものなのか」

というような、いわゆる“枠”で診断名を分つけることはほとんど意味をなさないはずである。



そして、その分別が治療を効率よくしているとも到底思えないから、私は尚、診断基準に違和感を覚えるのである。

また、その感覚で薬物療法をすると、うまく治療できないケースが多発するし、それらの症状をなんとか薬で治そうとした結果、薬が山のように増え、もともとの病状はどこかに消え失せ、発病当初とは全く違う精神病状態が出来上がる。

いわゆる、向精神薬の副作用による薬剤性精神病状態である。



発達障害を軸に考えてみても同じことが言える。
発達障害であるかないかという捉え方ではなく、その傾向が強いかどうかで見る必要がある。その傾向が強ければ、脳でのあらゆる情報の処理の仕方に困難さが生じる。そのような状況であれば、当然生きていきにくさが生じる訳で、その延長でうつになったり、何かに依存したりして社会的不適応を起こす。

発達障害の傾向の強い人は、他と同じような環境にいても、その人からすれば生きていきにくい環境であるから、通常の人よりも強いストレスを感じる。その結果、解離性障害を発症したりする。当然、神経に脆弱性がなくても強烈なストレス(レイプなど)を受けると、防衛機制的に解離性健忘・解離性遁走・離人症性障害・解離性同一性障害などさまざまな症状を呈したりする。

この症状の中には、幻覚(幻聴も含む)などもあるわけで、エピソードを聞かず、症状だけで判断して、統合失調症と診断されたりすることもある。そう考えると、すべての疾患が連続した、いわゆるスペクトラムという概念で考えることが一番納得のいくものであるということに気付く。

つまり、それが統合失調症の幻覚妄想なのか、解離性障害によるものなのか、それ以外のものによるものなのかは、その概念をどのように捉えるかというだけで、診断の“枠”で捉えるということには限界があるのだ。

発達障害の傾向にある人は、強迫観念も強い人がいるだろうし、単にストレス耐性が低いだけなら、いわゆる新型うつ病のようにもなるだろうし、場合によっては、免疫異常から自己免疫疾患からのホルモン分泌異常の延長で精神状態のアンバランスが生じるかもしれない。

また、なんとか適応できていても、調節がきかない、まさにall or nothingのような状況になり、アルコール依存や病的賭博に陥ったりする。



さらに、診断を“枠”で捉えるという考え方が、いまだに医療のベースになっているため、疾患等に関する研究もほとんど的を射なくなってしまう。

「統合失調症の遺伝子が解明された。」

この類のニュースをこの数年でいくら見たことだろうか。
疾患の概念が曖昧であるのに、遺伝子の研究をしても的中するわけがなく、
挙句の果てに、双極性障害と統合失調症に遺伝的なつながりがあるなどという、研究が発表されたりする。

いや、しかし冷静に見てみると、この研究などは、なんらかの神経の脆弱性を証明するものとしては納得のいくものであるから、ますます疾患のスペクトラムという概念に確信を持ってしまう。


診断名をつける際、どの傾向が強いかということを意識して、そして、発病に至ったエピソードをしっかり聞くことで、可能な限り、的のはずれない治療を展開することができるようになるはずである。


・統合失調症は100人に1人か
・うつ病の診断概念の拡散の問題は―
・なんでもかんでも発達障害という「発達障害概念の拡散」の問題
・アダルトチルドレンと解離性障害と境界性パーソナリティ障害の関連
・アルコール依存と重複障害

これらの問題もすべて、ここまで話してきた捉え方で説明できる。





今日は、あまりにも長文になりすぎたが、
久々に(しかも、相当久々であるが)blogを更新する気になったので更新してみた。







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