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精神科に勤めるなら、まずは他科で経験してから

投稿日:2006/07/12

・最初から精神科で働かないほうがいい
・精神科で働きたいなら、他科で技術を磨いてからのほうがいい


これらの言葉を耳にしたことはないか。もしくは、あなた自身が口にしたことはないだろうか。

私はこの考えに異論を唱える。

“他科で経験を積んでから”と多くの人間が口にする理由は、非常に簡単。単科の精神科病院では、直接的な看護技術を活かす場面が少なく、急変時など十分な対応ができないという理由がほとんどだろう。

私は、その考えを否定しているわけではない。しかし、“それだけではない”言いたい。
一つに、最初から精神科で学ぶという方法がある。これは、私が以前から拙著:「精神科看護師、謀反」で主張していた道筋の一つだ。もう一つは、一度精神科で学び、数年して他科へそして、数年後に精神科に戻るという方法だ。

 最初、他科で学び数年後精神科に意図的に戻ってきた人間を見たことがあるだろうか。単科の精神科では、それが非常に少ないように思う。仮に、最初に他科で学び、目標を持って精神科に来たものがいたとしても、思っていたような成果を果たせたものがどれだけいるのだろうか。精々、

「本当は、こういう治療でこうしてあげればいいのに」
「ここには、この器具がないから、こういう治療や看護ができない」

など、他科で学んできたことを還元するどころか、以前の施設との比較を披露するという短絡的な発想のみとなり、身につけた技術が“絵に描いた餅”になってしまうという悲しい結果も十分ありえる。それだけならまだいい、他科で働いて、そのまま精神科に戻ってこない看護師も沢山いるではないか。精神科とは何たるかを知る前に、他科の奥深さを知り、追求し続けるようになってしまう。決して悪いことではないが、これは、最初に精神科を志そうとしていた動機が他科によって完全にかき消されてしまった結果である。看護のことを真剣に考えているなら、他科にいけば他科の奥深さを知るのは当然のことだろう。他科で数年勤めれば、技術的に満足などという感覚にはまずならないだろう。そう考えると、他科から来た看護師は、他科で順応できなかった人間で、最終的に精神科に流れ着いているという現実も十分ありえるのだ。


今の外科で、こういう言葉を聞いたことがある

「精神科って、全てができる看護師がいくところだと思うんですよね」

確かに、精神科以外の人間からそういわれると嬉しくもあるが、よく考えると、これも矛盾が生じる考えなのである。他科でさえ、全てができる看護師であるにこしたことはないのに、なぜ精神科だけこのような特別視をされるのか。一つは、精神科が低く見られていた事実があるからであろう。実際、直接的な看護技術のみならず、専門である精神科看護や薬学知識・精神科疾患に対する知識も身につけているものが多いといえば嘘になる。これらの背景があるからだとは思うが、もう少し柔軟には考えられないものだろうか。例えば、

「脳外科で働きたいから、まず精神科で学んでから」

という逆の発想を持つ看護師はいないものだろうか。実際にそうさせるかどうかは別として、そういう考えを持つ看護師が出るように、精神科の専門性を高めていく必要が今後あるのだろう。

最後までご閲覧いただきありがとうございます。拙著本「精神科看護師、謀反」も看護の参考にしていただければ幸いです。