• HOME
  • 看護論的経営論
設定されていません

看護業務の効率化を実現する為のポイント

投稿日:2006/09/11

 前回の記事に続いて、今日は看護業務の効率化を実現する為のポイントに触れてみたいと思う。

早速話しに入ってみたい。

多忙な業務を効率的にこなすには色々な視点から条件などを見なくてはならない。よく話に出るのが、規定職員より看護職員を増やせばいいという単純な発想。これは、看護業務を効率的にする前に、病院経営側の体力が持たない。さらに、数が増えれば業務時間もスムーズに短縮するかというとそうでもない。人件費が沢山かかる割には、思ったほど効率的にならない。なったとしても一時的なものである。これは、人間の心理面から考えても動物の習性からもいえることだ。

ここから本題に入る。

まず、大まかな視点を挙げてそこから一つずつ論じてゆきたい。

①看護業務のどの部分をどの程度どのようにするべきか
②看護課以外との連携
③業務上の動線
④ハード面に頼る事は、経営の財政を悪化させるのか

まずは、①から
看護業務のどの部分に視点を当てればよいのか。ということである。業務改善と銘打つと、一つの業務を抜本的に変えなければならないという使命感にかられてはしないだろうか。実は、手っ取り早い方法が何点かある。
申し送りを廃止するという話は何年も前(かなり昔)から聞いているが、実際に完全に申し送りを廃止してうまくいった例はほとんど聞いたことが無い。一部は業務改善のためといって、それを導入したのだろうが、結局自分達の首を絞めたという施設が多い。そういう話はさておき、まだ申し送りは存在しているであろうという前提で話を進めてみたい。
ご存知の方も多いとおもうが、申し送りというものは変わりのない事はいう必要はなく、特に異常がなければ言う必要も無い。同じ事を数日間言い続ける必要も無い。他にも細かい要素はあるが、最低限これだけは守らなくてはならない。どうしても言ってしまうという人があれば意識して訓練をする必要がある。加えて「え~」とか、「あの~」とかの言葉は出来るだけ使わないようにする。これだけでも、30分かかっている申し送りだとしても半分にする事が可能。
そこで、たかが15分の短縮でどこが業務改善なのかという疑問を抱いた人もいるかもしれない。ところが、申し送りにおける15分というものは、業務の効率化に絶大な影響を及ぼす。
一人の人間が15分で申し送れるものを30分かかってしまっていたとしよう。つまり、15分のロス。ところが、申し送りを聞いている人間が10人いてるとしたら、それは実に150分のロスに陥ることになる。私が申し送りの短縮化は、その逆の発想であるということをわかっていただけただろうか。
次に②
看護課以外との連携であるが、具体的には医師や薬剤師・OT・PSWなどが、業務改善のキーポイントとなるかもしれない。医師であれば、手間のかかる薬剤処方や融通の利かない指示。または、診察時間。他にも医師が出来る業務であれば、細かいカルテ記載等少しでも協力してもらう等々いくらでもある。また、薬剤師にしても、普段、看護師達が受け取った臨時薬や定期薬をどのように処理しているか知ってもらう必要がある。そうすることで、看護師たちが処理しやすい分包の仕方を工夫できるかもしれない。作業療法士やPSWについても同様。出来るだけ業務を分散できるものならしてもよいはずである。
③の業務上の動線の問題であるが、
できるだけナースステーションと病室を行ったりきたりすることを避けるという事に心がけてほしい。これは、“心がけ”だけではなく、実際にどうするかという事を考えなければならない。具体的には、症状にあわせた患者の配置や(もちろん状況による)動線に合わせた物品の配置。そして、なにより看護者が訪室した際、できるだけ物事を済ます事が出来るような十分に物品を載せられたワゴンを準備する事である。物を忘れてナースステーションに取りに帰ったりすることは、1回1分以上、一日10回あれば一人当たり10分以上のロスタイムとなる。これも、この①で述べ事と同じように考えていただけば、ある程度その重要性がわかると思う。

④のハード面の問題であるが、
例えば、精度のよい10秒体温計や、電子血圧計。究極は電子カルテを含むオーダリングシステムである。電子カルテについては、完全に後発の法人のほうが有利である事は今の各施設を見ればわかる。電子カルテのソフトが熟成しないまま世に出回ってしまってるがゆえ、色々な欠点が見られる。それらを補った電子カルテソフトが出来上がればより業務効率化は優れたものとなる。また、高額で経営者側の体力が絶え得るかという問題であるが、これも導入が可能な体力(財力)があれば、業務の効率化だけではなく、財政面の効率化さえ実現できる。

以上、①~④まで大まかに説明したが、私の知っている限りどの施設も業務の効率化を効率化できていない。これまで業務改善に取り組んできた人間の視点は、まさに

※“業務の効率化”に対しての“非効率化”したものといえる

私が今回あげた内容は、各施設にそぐわない方法や手法があることはいうまでもない。しかし、ここで挙げたような【視点】で業務の効率化を考える事こそ、本当の業務の効率化を実現する事が出来る。つまり、業務改善に取り組む前に

※業務の“効率化”を“効率化”すること

が重要である事をわかっていただきたい。具体的な業務の効率化の方法は、その現場現場で違うが、まずは、その【視点】を変えることである。
あとは、施設各立場で働いているあなたのセンス次第だ。


最後までご閲覧いただきありがとうございます。拙著本「精神科看護師、謀反」も看護の参考にしていただければ幸いです。