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精神科患者の過剰保護 ~保護室のライター事故から振り返る~

投稿日:2006/10/18

先日の、隔離室患者のライター持ち込み放火事故をご存知だろうか。これを受けて、各精神科病院では、一斉に予防措置をとるよう各病棟にまで通達したのではないだろうか。

この事故により、各病院・病棟がどのような対応をとったのか心配な部分もあるが、今日はこれに関連させてその他の危険物管理についても考えてみたい。

特に問題となるのが、精神科閉鎖病棟における危険物管理である。ここでいう危険物の定義は非常に曖昧である。また、各病院・施設、各病棟、さらには各医療スタッフにおいてまで危険物の認識には差があるのが実情。

完全にその認識を一致させるとなると、看護上の矛盾が生じるので、環境に合わせた配慮が必要となるのは言うまでもないが、気になるのは、その

※物品の過剰管理と、患者の過剰保護にある。

事故から守る為の物品の過剰管理と、患者の過剰保護意識は、QOLを著しく低下させ、時には人権まで侵害する事もある。そして、過剰管理・過剰保護意識は思ったより効率的でなく、QOLを激しく低下させる割には、患者をその危険から守る事は出来ないものである。

例を挙げてみる

・カーテンで縊首(首吊り)行為があったから、カーテンを撤廃する
・ベルトは首吊りの元であるから一切使用禁止
・トイレに患者が閉じこもることがあるから、内鍵は出来ないようにする
・爪きりの詰め所管理
これらに該当する施設は減っているはずであるが、他にも物品の過剰管理と患者の過剰保護は存在するのではないだろうか。

もちろん、状況に合わせた対応が必要であることは当然であるが、忘れがちなのは、

※それが当然であると考え、物事の妥当性を吟味しなくなる事

である。精神科看護では、患者の何らかの制限をかける事は、日常であるし必要であるうえ、病院規則として定められているものもある。しかし、過剰な規制や過剰管理が患者の過剰保護につながっていないだろうか。

今回のライター事故を受けて、各物品の過剰管理が横行しない事を願うと同時に、物品管理の必要性を再認識してもらう機会とし、当たり前とされている各環境を再吟味・検討してもらえればと思う。


最後までご閲覧いただきありがとうございます。拙著本「精神科看護師、謀反」も看護の参考にしていただければ幸いです。