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いじめの脳へのダメージと精神疾患を考える
昨今、いろいろな研究論文が出され、精神疾患についての成果も徐々に出つつある。
色々とサイトをみていたら、精神疾患といじめとの関連について興味深いものがあった。
http://kawata3.web.fc2.com/doutoku/doutoku08.html
河田孝文医師のページ。
主題は「いじめは脳を傷つけている」というものである。
この記事の要点は、
・深刻ないじめによって扁桃核に傷がつく
・扁桃核に傷がつくと,精神疾患が起きる
ということが書かれている。
少し細かい所でいうと、
「うつ病や統合失調症と診断された患者を検査したところ,全員に扁桃核に傷が認められた。」
「統合失調症より,うつ病の症状が優勢な場合には,扁桃核の傷のほか,隣接する「海馬」の萎縮も現れる。」
「継続的に精神が不安定になる人は,セロトニンが減少し,ドーパミンが過剰になる。」
「ドーパミン毒性が脳に傷をつけているのではないか。」
このように書かれている。
たしかに、ストレスによって脳がダメージを受けているという説明はとても納得がいく。
これらに関連することは、2年ほど前、このblogでも赤沼侃史先生の本を参考にある程度詳しく触れた(以下、一部再掲)。
不登校という行動をもって自宅に引きこもることで、なんとか精神を保とうとしてきたことが、登校刺激により、最後の砦をくずされることになる。その結果、子どもは次の反応を示す。
① いい子を演じる―
反応は様々だが、回避行動である不登校という行動を阻害(つまり、登校刺激)されたとき、子どもは、さらなる回避行動としていい子を演じるようになる。親などから見て、いい子であることを演じる(もちろん無意識に)ことでそれ以上ストレスを受けないようにする。ほめられるような状況をつくることでストレスが回避されるのではないかという、ある意味正常な反応である。
② 暴力的になる―
良い子を演じることに限界が来れば、子どもは攻撃的になったり、暴れたり、困らせるような行動をとるようになる。ここであまり表現できない子どもは、この段階では目立たず次の回避行動に移行していく。
③ 神経症を発症―
攻撃的な回避行動を表現しにくい子、あるいは、それを親に抑圧されるような環境にある子は、目立たないまま神経症(自律神経症状含む)、あるいは精神病用症状を呈すようになる。
要するにトラウマに対する反応がこれら行動や身体、あるいは精神の症状として現れているわけである。その他、性的な虐待その他本人にとって強烈なストレスとなるものは、同様に扁桃核や海馬に影響が出ると思われる。
その結果現れる症状がPTSDであり、解離性障害の症状であり、また(統合失調症と表現されることが多いが)、幻覚や妄想を呈した場合である。
いじめや類似のストレスが起きた場合以外にも、ウィルス性疾患や器質的なホルモンの異常によっても、扁桃核や海馬やその他の脳機能に影響が出て、精神疾患の症状を呈すると考えられる(精神諸疾患は扁桃核と海馬だけで説明できるものではないが要素としては大きい)。
問題は、それをみてすぐに向精神薬を投与するのではないかというところにある。不登校の子供にしても症状に対して向精神薬を投与するのではなく、トラウマを解除するかかわりが重要となる。解離性障害やPTSDに対してもその場しのぎの一時的な薬の投与はあったとしてもそれで治療しようとするようなことがあってはならない。
にもかかわらず、なぜか統合失調症の初期だという形にして薬物療法を続けようとする傾向が未だにある。治る可能性の高いものを、統合失調症として、根本の問題にアプローチせず、薬物療法で治療することはほぼ良い結果をうまない。
多くの相談事例からも間違いなくそう感じる。