• HOME
  • 看護論的経営論
設定されていません

医師が優れているという幻想

投稿日:2006/10/22

医師が優れているという幻想

むしろ大学病院や公立系の病院では、こういった印象はまったく逆ではないかと推測する。そこには研修医なども数多く在籍し、看護師もインセンティブの高い者がおおい。そういう環境では、医師へ意見する看護師も多いというのが、自然な光景ではないだろうか。

ところが、精神科病院となると、状況は一変し、医師は偉い立場にあるという傾向が目立つ。実際のところ、経営権を握るのは理事長(医師)であるから、そのトップの思想の元、そういう環境が作られるのは自然な流れかもしれない。

そうとう昔に、こういうことを考えた事がある。

・IQが高い者が医師となっているのだから、偉いのは当然だ

こういう考え方も一理あるが、これも完全な偏見であることは今更いうまでも無い。確かに、看護師のIQと医師のIQの平均値をとれば、医師のほうが高い事は否定しがたい事実であろうが、端的に

※知識的な偉さと、職場での偉さ(立場)はまったく別物である

と、今更にして言っておかなければならない現実があるのは悲しい事である。


昔から、看護師の位置は、医師よりも低いという感覚はある。保助看法で、「療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする」という文言が付けられているからであろうか。この文言で、大きな勘違いをしているものも少なくないと思われる。医師の指示のもとに診療の補助を行うという事は、紛れも無い事実であるが、

※医師の指示に対して意見をしてはいけないなどという事はどこにも記されていない。

この事だけは、勘違いしないでいただきたい。だからといって、研修医などに上からものを言ってよいというわけでもない。双方が医療チーム上では同じ位置にいる事を忘れてはならない。看護師は、時に“ミニドクター(プチ医者)化”することがある。知識があるからといって、上からものを言い、自分の診断が正しかったと武勇伝を語ってばかりの看護師も大きな勘違いをしているといいたい。そういう行動をとる前に、先に述べたように、その様な診断的予想も含めて意見する事が医療従事者として真っ当な行動であると思う。


IQの話でも述べたが、それぞれ医大と看護学校に入った時点で学ぶ事が違えば、難易度も違う。だが、それはあくまでも入学までのものであり、私の重視しているEQなどは考慮されていない。むしろ、EQは医大よりも看護学校のほうが刺激されやすいのかも知れず、またIQはEQによって大幅に変わることも知られている。

そう考えると、入学時の偏差値やIQなどで身分を定めてしまうなどという事は、医療チームを形成する上では、大きな足枷になるだろう。もちろん、全員の医師・看護師がそうであるというわけではないという事は、付け加えておかなければならない一言であるが、こういう上下の立場を今尚主張し続ける若い医師もいれば、それに反論できない看護師も多い事は事実であろう。

看護師が意見すると、医師が
「君が診断するわけでも無いのに」とか
「偉くなったなぁ」とか
そのような言葉を口にする医師を見たことがある。

それを言われた看護師は、その影響を受けて看護師同士で
「先生の指示だから」
などと言い、その身分差に拍車をかける。


※療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者

私達は、この言葉を深く受け止め、これから更なる医療チームの再形成に動き出す必要があるのではないだろうか。