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単剤治療が浸透しない理由(わけ) -多剤併用療法よりも誤診が先-

投稿日:2009/10/27

気がつけば10月下旬です。あと数カ月である一定の段取りがつき、発表できることもあるかと思いますが、もうしばらくお待ちください^^さて、しばらく更新もしてませんでしたが記事を・・・


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最近、いろいろなところで向精神薬の多剤併用療法が良くないという考えは広がってきた。新聞や書籍などでも浸透してきたように思う。

しかし、処方を施す立場の医師は、

※「わかってはいるが、実際はそううまくいかない」
※「単剤ばかりを訴えている者は、実際はわかってない」

だいたい、こういう意見が大半を占めているのではないだろうか。



ちなみに先に多剤併用療法の私なりの定義について話をしておくと

・抗精神病薬に限って言えば単剤でなければならいが、気分安定薬や抗不安薬などの併用は単剤治療に含まれる。しかし、抗不安薬などの薬剤を数種類小出しに処方するケースは多剤併用療法の範疇である。抗精神病薬1種類に抗うつ薬を処方するケースも同様である。

と定義しておきたい。



そこで話を戻すが、結局単剤治療の考え方はある程度浸透しているのに、なぜ広まらないのかというところを考えてみたい。大きく分けてだいたい3つほどになると思う。

1、医師の勉強不足とセンスの悪さ
2、先日の記事にもあるようにパラダイムシフトが起こっており、プライドの高さが邪魔をしている。

そして、これが一番の問題だと思っているのだが
3、誤診がベースにある。


この3の問題は、まだまだ大衆に触れられていない。
誤診の問題は、精神疾患というところの特殊性から、なかなか証明することが困難である。
それと、それぞれの疾患の見解も曖昧であったりするという事実もあるため、さらにその証明を困難にしている。

しかし、他の疾患を統合失調症と誤診するケースは、比較的証明しやすいように思う。
当法人に相談に来たケースで統合失調症と誤診された解離性障害のケースなどはその典型だろう。

解離性障害は、幻聴や誰かが見ているなどというケースも少なくなく、なかにはそれを霊感があると表現する人もある。
このようなケースに対して、これまでの生活背景を聞かずに症状だけをみて、統合失調症としてしまうのである。
また、それより軽症の例でも誤診される。例えば、誰かが見ているという恐怖感があったりすると当然不安が増すわけで、そこから鬱状態も併発したりする。その、うつの状態のみを見て「うつ病」と誤診してしまうなどのケースだ。このような誤診は日常茶飯事だろう。

そこに、抗うつ薬を投与しても全体としてはなかなか改善せず、夜も眠れないとなるとベンゾジアゼピン系の睡眠薬が出され、それでも眠られないからとベゲタミンAやセロクエルが出たりする。そうこうしているうちに認知機能も落ちてきて、イライラや不眠もひどくなり、抗精神病薬(すでにセロクエルがそうであるが)の登場である。

こうなると、受診以前のほうが体調はましであったりするが、こんな軽い(実際は軽いとは言えないが)ケースですまないものもある。

要するに、患者のファーストエピソードを逃すと、治療そのものが間違ってしまうので、適切な処方もできるわけもなく、悪化する一方であるというケースが頻発しているのである。

もちろん、誤診であっても偶然にもその薬が効くケースもあるが、解離性障害などは薬物療法が主(少しは必要だが)ではないので長期間飲み続けることになる。



アスペルガー症候群や広汎性発達障害など、発達障害圏の誤診も多い。何かが聞こえたり、特殊な感覚的なことを話せば即統合失調症といわれるし、このような患者さんはSSRIや抗精神病薬に対して極めて副作用が出やすい。

見かけでは、まったく障害が見られないが実は、曖昧な表現がわからないとか、思ったことをすぐに口にしてしまうから、昔から人間関係を維持できずにいた。それがなぜだめなのか分からず、しかし、勉強はそこそこできた、ある一定の音を聞くとわけがわからなくなってしまう、親に部屋のものを動かされると混乱してしまう。このような高機能自閉症のケースに関しては、見かけ上全くの健康体にみえるので、うつ状態を併発して抗うつ薬を処方されるとactivation syndrome(アクチベーション シンドローム)を起こす。このSSRIなどにみられるactivation syndromeは、副作用とされているがその多くは、発達障害などの二次障害にみられるうつ状態に適応としてしまったがために起きた症状であるように感じてならない。


このように、現状では向精神薬の単剤療法は認知されつつあるにもかかわらず、処方そのものとしては浸透しないものの原因にこれらの要因が考えられ、今後どのように浸透していくのか見ものである。





















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