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癌治療と看護師の位置づけ

投稿日:2006/05/30



 昔は=死とされていた病である。外科的技術と薬学の進歩とともに治療の多様性も増してきた今日、逆に人間らしさというものが失われてきたようにも見える。私が科学技術の進歩についてこられていないといわれればそれまでだが、日々癌治療目的で入退院をする患者をみているとそう思わざるを得なくなってくる。
 
 癌の治療には、
1、化学療法(薬物療法)
2、放射線療法
3、外科療法(手術で切除する)
まだまだ勉強中の身であるが、大まかに癌の治療法はこの程度かと思われる。この1~3を病態に合わせて(集学的治療)、また、Dr.の情報提供と患者本人のQOLを含めた希望もとりいれ治療方針が決定される。
 
 化学療法とは、ケモセラピーと言われ病棟では「ケモ」と略されスタッフ間で情報交換がなされている。当院では、癌の告知は97%~98%程度で未告知の患者が珍しいほどである。そういう意味では、今日の癌は治療可能・長期延命可能な疾患になったといえ、日本人の好きな表現で言うと“欧米やアメリカ”式に近づいたともいえるかもしれない。しかし現実は『異様』である。

患者の形態は、病態によって様々。
 
 外科治療に化学療法を併用し無事に退院していく患者。片や、治療困難ではあるが希望を持って日々治療に専念する患者。末期となり、苦痛を取り除くセデーション(麻薬で意識レベルを下げ苦痛を感じにくくさせる)をかけ死が来るのを待つだけの患者。

これをみて、自分ができることはなんだろうかと日々考えるのだが、まだはっきりとは見えてこない。自分の力量を評価することはさておき、気になるのはその治療の舞台となっている病棟の異様さである。

化学療法には、断続的にコースと銘打って実施されるパターンがある。

「FOLFOX 2クール目にて入院」などと看護記録にも書かれる(FOLFOXとは、化学療法の種類)。

1クールが終了し、退院した患者が数週間後にまた入院してくるのである。

「おお、久しぶり」

このような声をかけられることは少なくない。

 副作用が強くなり、退院は延期。家よりも病院で過ごす期間のほうが長くなったりすることもある。もちろん治療不可能で、姑息的治療しか行えない患者はその入院期間がどんどん延びてゆく。化学療法の強烈な副作用に苦しみ、ナースコールを押す患者。それに冷静に対応する手馴れた看護師。

 ずらずらと、順番に入院してくる患者達は、まるで流れ作業のようにも見える。入院が常連になればなるほど、死は近づいてくる。私達看護師は、日々それを学ぼうと一生懸命勉強し、一生懸命患者にも接する。流れ作業の仕組みを学ぼうとしている私達は本当に患者のために働くことができているのか。私はここで何をしているのか。患者の苦しみを日々共感しようと努力し続けていることだけに注力することは本当の意味でプロの看護師といえるのだろうか。


治療方針は、医師が決定する。これは、法的に定められ道理にも適った法的根拠がある。問題は、

治療方法の選択枝も医師が提供するというところにある。

ここに私は大きな疑問を投げかけたい。医学的専門知識を持ち合わせていない私達看護師でも、医師による専門的知識を患者に提供するというフォローがあれば、治療方法の選択肢の提供は可能なのではないか。むしろ、そのほうが患者の真意を引き出せないだろうか。

医師は時に、自らの治療方針や成績に固執してしまうことがある。これは、医師やその人間性に問題があるからではなく、医師という立場であるがために、そのようになってしまうのではないだろうか。そのような立場にある医師が選択肢を提供しても、知らず知らずのうちに治療方針が決定されていたということも少なくないはずである。もっと、知ることができたはずが、知らずにその狭い選択肢の中からやむを得ず選択させられる。医師はこのことに意図的ではない。看護師も、その過程を知ることができない。ここに大きな改革のメスを入れたい。
 癌患者は今後も増加の一途をたどるだろう。QOLを重視する必要性も求められる。そこに、第三者として、看護師が治療方針の提供を行うことで、幅の広いQOLを重視した情報の共有が可能となる。それで、より人間らしさを提供する機会を与えることができればと考える。もちろん、無責任に看護師全員にそれを可能にせよとはいはない。今流行の認定・専門看護師がいまの妥当なところだろうか。
 医師よりも患者と関わる機会の多い看護師は、患者の心の変化もつかみやすい。専門の看護師を置くことで機動力も増し、患者にとってより納得のいく治療が可能となる。そこに医師が参加することは、当然有効なものとなりうるので否定はありえない。

まず、法的責任を医師から看護師へ移譲させることだ。

本当の意味での専門性や地位の向上とは、このことが実現されて始めて証明されるのではないだろうか。

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