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行動制限における曖昧な概念 ‐厚生労働省からの回答を踏まえて-

投稿日:2007/12/13

少しでも早く、厚労省からの回答をお知らせしようと昨日記事を書いていたのですが、酔っ払って書いている途中のものをざっくり消してしまいました。さすがに萎えました(笑)3人目の子のお話もしたいのですが、それはまた今度ということで・・・。


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精神科病院における、行動制限。特に、身体拘束における問題に関して、先日書いた記事に絡めて、お話ししたいと思う。

厚労省が、「短時間の点滴であれば、拘束の必要はない。しかし、長時間に及ぶ点滴であれば、精神保健指定医の指示と既定の書類手続きを要する」という旨の発言をしたという件に関して、数日返事を待った。しかし、どのような理由からか(多忙か怠慢か)は別として、スムーズな返答がなかったので、週明けに再度問い合わせ、厚労省の担当の方が、出られたので、前回の話も付加して説明をした。

担当の方の返事を箇条書きにすると、
・短時間の医療行為(たしか、このような表現であったと思う)であれば、精神保健指定医の指示は必要がない。短時間とは、常識の範囲で判断できる範囲。
・IVH(CVC)など、長時間に及ぶものであれば、精神保健指定医(以下、指定医)の指示を要する。

このような返事をいただいた。私は、前回と同様の部分もあるが、

①短時間という曖昧な概念の上で、身体拘束を受けている患者が、他の患者に暴行を受けて亡くなったり、嘔吐などで窒息死した場合、家族が訴訟を起こしたら裁判で争われる複雑な問題ではないか。厚労省が、公に発表していたとしても、精神保健福祉法にはその文言は一切記述されていない。もちろん、指定医の指示を受けていたとしても、訴えられれば問題となるが、医療従事者及び管理者の過失となるのか、監禁など、故意の行為ととらえられるかでは大きな違いがある。この辺の問題が起こったとき、どちらであるか、明確な返答ができるのか。

②その発言は、誰がしたものか。精神保健福祉法に規定されていないことはわかっているが、文書の発表形式としてはどのようなものなのか。

③短時間という捉えかたは、役人と現場の人間とは大きな差異があることを認識するべき。

④前述の諸々の訴訟問題が起こったとき、医療者側がその医療行為を「短時間」と認識していたのであれば、当然厚労省の発表にあったように“従っただけである”と主張するであろうが、その辺の責任は負えるのか。拘束における諸々の厚労省の発言は、どのくらいの権限(あるわけがないが、法律を上回るものであるのかなどの意味を込めて。)があるのか。

などを質問した。



①については、「そのへんは、裁判官が判断するところなので何とも言えない」

②について、どのような文書かというと、議事照会(質問されたものに対して、公に返答したもの)という文書を通して述べたものであるということ。

③については、やや論点がずれた返事もされたが、その辺の問題に関しては「そうですね」との返事。

④については、あくまでも法律をどのような解釈をすればよいのかということを述べたものであり、法律を上回るものではない(当然であるが)。

との回答。
色々と話をしたが、結局、議事照会を真に受けて


※短時間の医療行為

という文言を武器にして万が一事故が起こったとしたならば、その議事照会にある“短時間の”という文言を争点に争われることになるに違いない。



“短時間”という概念が、
・1本の点滴のことを指すのか
・1本であれば何分までなのか
・1本であれば、何時間でも良いのか
・100mlの点滴なら、2本など複数本でも良いのか
さまざまな解釈があるはず。また、このような場合、解釈は限りなく広まるもので、

・1本の点滴なら何分かかっても良い
・2本でも持続点滴でなければよい
・何本でも持続点滴でなければよい
・点滴なら指定医の指示はいらない
・治療上のものなら、身体拘束は指定医の支持を要しない

といったように、限りなく解釈が拡大していってしまうのである。もちろん、明らかな問題として浮かび上がったときは、誰しもその行為に“おかしい“と思うのかもしれないが、現場では明らかな事故が起こったりしない限り気づかなかったりすることもないことはないのである。
法律と厚労省の発表の解釈をどのようにするかは、施設の判断にもよるが

※法律と厚労省の議事照会とのからくり

に気づいている者がどれだけいるのかということに一抹の不安を感じる。


看護の対象は患者である前に人である。その人、それぞれには権利というものがある。当然ながら、その人達の権利を侵すようなことがあってはならない。だが、厚労省の議事照会は、極めて曖昧な概念を打ち出し、それが誤解釈を生み、患者の権利を、人権を侵すものとなったことには違いない。



ここで、今回厚労省の回答を踏まえて、改めてNPO法人泉州精神看護研究会として一つの方向性を打ち出す。



※精神保健福祉法における行動制限、特に身体拘束実施における曖昧な判断基準をを明確にせよ。



今回の問題に関しては、このような方向性で活動していくことを報告し、今回の記事とする。










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