• HOME
  • 看護論的経営論
設定されていません

医療に外国人の手が必要か?

投稿日:2006/05/20

 この問題に関しては、看護師の反応が非常に薄い。危機感を募らせているのは私だけだろうか。
 最近辛口のコメントが少ないので私に対して期待している方もいるかもしれないが、できるだけ柔らかく説明するよう心がけたい。皆さんはこのフィリピン人介護士受け入れのニュースを見て、どのように感じただろうか。多くは

「そうか、将来の少子高齢化にむけてそういう手段があったのか。いい方法だ」と思ってはいないだろうか。

そう思った方がいるのであれば、即刻改めていただきたい。“共存共栄・助け合い”という言葉の元に根本の問題となるものが隠れてしまっていることに気付くべきだ。

できるだけわかりやすく説明してみる。

 まず、フィリピンという国自体が外国で働くことを推奨しているということを頭に入れていただきたい。これは、介護士・看護師という職業に限った話ではない。そこに、小泉首相がフィリピンと約束を交わし日本の介護士・看護師不足にこの手立てを打とうとしたものが今回問題としたところである。
 小泉首相も馬鹿ではない。もちろん、フィリピン人が日本で働く為のハードルは高くしている。言葉の壁と資格(介護であれば、ヘルパー資格ではなく、介護福祉士資格でなければならないなど)による調整だ。これで、大量の流れ込みを防ぎ、且つ政治的にも友好を示す為のカードをきったことにもなる。小泉首相からすれば、できるだけ受け入れたくない構えのように伺える。
 だが、よく考えてみてほしい。医療関係の職業において、フィリピン人を受け入れることは私達看護師をも追いやる、そして、国益を損ねることにもなりかねないという事態が起こりうるのだ。


少子高齢化による人手不足

この言葉に、だまされてはいないだろうか。フィリピン人を受け入れる前にまずすることがある。64万人(2004年度)の可能性を秘めた日本人労働力の活用である。この数字は何かおわかりだろうか。

 いわゆる、ニート(NEET)の人数である。この、可能性を秘めた労働力を何故放置するのか。この問題の根本的解決法を編み出す事が、労働人口の不足を補い、直接国益に寄与させることに繋がるもっとも手早い方法であることを国民全体に周知させたい。私に言わせれば、この問題を抜きにして外国人を日本に受け入れることはありえない。他にも大きなリスクがあるのに、それを何故受け入れられようか。様々な要因があろうが、完全失業率も300万人弱はいる。潜在的に看護師資格を有したものも考えると、今フィリピン人を受け入れることは、時期尚早。むしろ必要ない。まずは、NEET問題をはじめ、ここまでに述べた問題を解決することが先決である。

 フィリピンは、発展途上国という位置づけ。国民一人当たりの所得平均も日本人のほうが高い。“出稼ぎ”という形をとっているフィリピン人も多い。外貨を獲得する為に、フィリピン人は必死に出稼ぎに来る。
 問題は、いくら日本で就労するための介護・看護師のハードルを高めようと同じであるということ。ハードルが低ければ、質の悪い外国人が大量流入。治安の悪化も免れない。ハードルを高めても、ハードルが低いときに比べれば流入数は減少するだろうが、今度は質の高いフィリピン人介護・看護師が流入する。
 外国人の質の高い介護・看護師の流入。これを「良いこと」と思っていないだろうか。今回の問題においてそう思ったのならば、医療関係者であるあなたは完全に危機感が薄い。
 給与体系がどのようになるかという問題もあるが、確実に私達医療関係者の一部は職場を追いやられる。患者に満足な介護・看護を提供できないとしても、施設としては経営上人数が満たせている。数は不足しているのに、日本人看護師は就職できないなどということもありうる。景気は回復しているとはいえ、全体的な有効求人倍率は1.0倍程度。看護師のそれは別と見ても、将来看護師の就職難もありえない話ではなくなる。
 人手不足解消に打って出た策が、解決しないだけではなく、無駄に労働問題を大きく複雑にしてしまったということにもなりかねない。さらには、差別問題へと発展し不要な文化摩擦も起こりうる。そこまでの危険をはらんで、今するべきことなのかどうか。政府には慎重に考えていただきたい。

最後までご閲覧いただきありがとうございます。ここで宣伝。拙著本「精神科看護師、謀反」も一人5冊ずつ買うべし。
面白くなかったらごめんね。よろしく。