• HOME
  • 看護論的経営論
設定されていません

医療(医師)と看護(看護師)の狭間で忘れ去られているもの

投稿日:2007/09/17

今日は久々のゆっくりとした休日。昨日まで鬼のようなスケジュールで死ぬかと思いましたが、何とか乗り切りました。その中でも先日の日本看護サミットは、かなり有意義なものとなりました。精神科・精神看護を軸として活動している私にとって、看護というものをもう一度再認識させられるきっかけになり、また日本看護協会・看護連盟の現状もよくわかり、同時に問題点もはっきり見えたという意味では、新たな角度からの切り口が必要だとの認識を得ました。約3000人の前でシンポジストに質問する。これは、興味本意ではなく我々の立場でメッセージを発信する貴重な場でもあります。最初は恥ずかしいものですが、これをお読みの方も看護研修などに出た時は積極的に発言してみてはいかがでしょうか。自分で発言することの奥の深さを考えられるようになると、看護に対する考え方も自然に深まってくるものです。当NPO法人の面々とのお酒の席も楽しかったです。他の方々との出会いもあり、今後に期待したいところですね。さて、タイトルにある本題に入るとしましょう。


最初にこれを見ていただいて

日本看護サミットでは、元厚生労働大臣の坂口力氏や南野知恵子(看護婦を看護師に変えるために尽力された)氏、他にもあらゆる立場にある方々が座長・シンポジストとして参加された。

シンポジウムの評価そのものは保留するとして、気になったのが職能団体としての主張である。

看護師の職能団体の集まりであるから、看護師の立場からの主張があることは当然であるが、過剰な権利を主張する傾向もみられたという意味では一抹の不安を感じた。

例えば、患者の安静度の話。

「術後などの安静度の判断は医療(ここでは治療の意)ではないから、看護独自で判断・実行できるようにならなければならない」のだという。

看護師の専門性を高めたい気持ちもわからないでもないが、そこに医療事故がついてくるのは必然で、その辺の問題と看護師の全体的なインセンティブや能力の底上げは全く議論されておらず、あの席ではシンポジウムに参加した傍聴者は大きな誤解釈を起こしたであろう。それを最新の情報として各医療機関に持ち込むのだから発言者のその責任は大きい。

そもそも看護大学が、専修学校よりも学力・実践力的に優れているという前提で議論されていること自体が問題で、それを前提で議論することを良しとしたとしても看護大学卒業の看護師が増加することで全体的な学力がどのように変わったのかを評価できていないのであれば、看護師の専門性を突き詰めていくようなことをしてはならない。対象は患者である。言うまでもなく人間であるから、「おそらくこうなるだろう」という推測での行動は許されない。看護協会側の主張が結果的に人命に直結することがあることも理解しておくべきだ。

また、看護師の業務独占的な表現をしていたが、それをしてしまえば医師と看護師の対立構造が一層激化し、目指していたチームワークの根底が覆されるだろう。


そして、決定な問題がある。
今回議論で完全に忘れられているのが、医師でも看護師でもなく






※介護



の問題である。
離職率一つにしても看護師以上に介護の問題は深刻である。診療報酬の観点からはあまり重要視されていない傾向にあることがさらに問題を深刻にしている。介護の充実は看護の充実であり医療全体の充実につながるはずである。日本国の財政面からの問題がまず最初の難関となるだろうが、それを含めて介護の充実を議論しなくてはならない時期に来ているのではないだろうか。そう考えたとき、看護は看護師、治療は医師というように別個に議論していては本当の医療の問題に立ち向かうことはできない。

今回の看護サミット一つにしても私のような精神科に携わる立場の人間からの意見に敏感に反応できないあたり、看護の統一性もまだまだ遠いと言わざるを得ない。ある一定の立場にある人間が「精神科は技術が身につかない」という発言。それが精神科看護に与える影響をどの程度理解しているのだろうか。非常に残念である。

間違った概念での専門性の主張。現場が見えていない管理者側からのトップダウン形式。このような現状があるうちは医療全体が本当の意味で“一緒に議論される日”が来ることはないであろう。




---------------------------------------------
※NPO法人 泉州精神看護研究会への寄付金・募金をお願いしております。以下の振込先ですが、お振込みの際は必ずmail@seishinkango.jp宛てにご連絡ください。募金に関しては、使途を明確にし医療の発展に役立てたいと思います。
---------------------------------------------
振込先:三菱東京UFJ銀行 岸和田支店(店番780) 
普通口座 3624711
口座名義 特定非営利活動法人 泉州精神看護研究会 
---------------------------------------------

※NPO法人 泉州精神看護研究会の会員を募集中です。ご興味のある方は、まずはmail@seishinkango.jpまでメールをお送りください。入会にあたり、特に地域を限定するものはありませんので、遠方の方でも遠慮なくご連絡ください。
---------------------------------------------

※拙著「精神科看護師、謀反」をご入用の方は、mail@seishinkango.jpまでメールをお送りください。送料は、当方負担で無料送付(本代別途)させていただきます。