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広い視野を獲得する努力

投稿日:2007/06/03

昨日、妻の両親が久々に来るということで、旅行を兼ねて和歌山方面へ。ついでに、というと失礼ですが、私の看護学校時代の恩師と話をしたいということもあり、現在は某病院の看護部長を勤める恩師に予め病院内案内を希望していました。お互い時間が合えばOKということで、当日それが実現。そこでの話を少ししたいと思います。

宿泊先のホテルとその病院は、タクシーでほぼワンメーターの距離。妻の両親と、私の家族でホテルに向かう途中、私だけ恩師(現看護部長)が勤務する病院へ。

見るからに大規模な病院。以前もここに訪れ、外見は拝見していたが、いよいよ見学が実現するということで気分が高まる。しかも、今回は、そこの看護部を統括する恩師(恩師と連呼するのもくどいため、当時からの呼称で、以下「先生」と表現する)が直々に案内してくれるというのだから緊張が高まって当然である。

連絡を取り、約半年ぶりにの姿を拝見。白衣姿となると、5年以上見ていない。そういう意味では、色々な懐かしさがこみ上げてくる。

病院自体は夕方を過ぎた頃で、外来も人影がなく静まりかえっている。
ところどころで、看護師達が業務をしているのが目に付くが、騒がしさは感じられない。

そこで先生にかけられた第一声

「また、やんちゃな格好で・・・。その、胸にぶら下げてるサングラス、どこかになおしなさい。」

「しまった。」胸の内で自分の失態にボヤく。

先生の指摘を受け、すぐさま自分のバッグにサングラスを入れる。
サングラスが歪むのではとの不安もよぎったが、私の中ではサングラスのほうは優先順位が低いようだ。
続けて、

「その服装じゃ、病棟はまわれないわね」

相変わらず、ズバッとシャープな指摘。社会人として最低限の事も、学校生活の中で先生から学んだはずが、どうもたるんでいたようである。

「・・・はい(汗)」

病院に着く直前まで妻に

「この服装やばい?」

と何度となく確認を取っていた私。妻はどのような状況の場所に行くのか具体的に理解しているはずもなく(私が説明していないのだから)、妻の言葉を信じた自分の馬鹿さ加減に後悔。



病院自体はバブルの頃に建てられたという。柱もホテルのような高級感のあるずっしりとしたもの。床から天井へ左右一面何本もの柱が伸びている。

建物に圧倒されながら、まずはどのような取り組みをしているかの説明を受ける。説明は、新聞記事に掲載された事を中心に説明してもらったのだが、どれもカルチャーショックの連続。

どうすれば、これだけの医療格差を縮める事が出来るのか。現在の精神科と比較すればそれがさらに際立って見えた。

それは医療技術どうこうではなく、“組織としての完成度”としての視点からのものである。

・地方の救急隊との連携
・助産師が出産を扱う「院内助産院」の開設
・緩和ケア病棟の立ち上げ
・設備の有効活用

挙げれば限りが無いが、説明を受けるたびに頭を抱えこむ。

途中、先生がPHSを手にとる。
「もしもし、あなたに合わせたい人がいるのよ」
受話器に向かってそういうが、誰かは教えてくれず。


食堂・売店等も見学しながら、非常階段から病棟へ。

先生「どう?彼(私)のこの格好問題ない?」
男性「あ、はい」

病棟を統括している男性の師長である。私が教え子であることを紹介した後の先生の一言であったから、師長は「その格好ではちょっと・・・」と私に対していえる雰囲気でもなく、形としてむりやり病棟見学の許可を得た形である。

先生「あなた、謙虚に歩きなさいよ」

私「はい・・・・」

申し訳なさを感じながら、病棟へ。


緩和ケア病棟の紹介である。
しばらく精神科ばかりをみていると頭が凝り固まっている事にふと気付かされる。

看護数:病床数、病棟の特質など。短時間であり、込み入った話は不可能であるが、話の節々に師長の看護師としての質の高さ(私がいうのも失礼な話だが)がうかがえる。

師長「最近は、ドアを開けておいて欲しいという方が多いですね」

この一言が私の頭の中に飛び込んできた瞬間、私なりの答えも直ぐに出ず、緩和ケア病棟における看護の特質を間接的に教え込まれたような気がした。


医局の前を通り、カルチャーショックの連続が続きながら、看護部長室へ。
そこには、副看護部長と教育を統括する師長(肩書きをわすれたので、申し訳ない・・・)が座っている。

先生「あなた、何か質問ないの?」

私「え・・・、いや・・、あの」

カルチャーショックの連続で、質問というより、どうすれば精神科を同じ位置にもっていけるかという漠然とした考えしか頭になく、それを質問できるわけもなく、もたもたしている間に、

先生「コーヒー?紅茶?緑茶?」

私「あ、お茶が・・・・」

先生「お茶 “が” ね。」

なぜか、言葉の“が”を強調する先生だが、その意図がわからず(昔から言葉遣いなどがおかしければ指摘が入るので、また間違っているのかと)、余計に緊張が高まる。

先生「お菓子も食べなさい」

この期におよんで、茶菓子など喉を通るわけもなく、鼻の頭には汗が溜まる。

緊張はあったものの、話は看護管理から始まって、あらゆる角度からの話ができ、気付けば19時。できれば、外でお酒を飲みながら話をしたかったが、今回はそういうわけにもいかず、病院を後にした。


今回は、あえて意識的に病院見学を申し出たわけであるが、それは私自身の“広い視野を得る”ための意識付けといえるかもしれない。
大病院で取り入れられている事をそのまま地方の精神科の病院にそのまま取り入れるというのもまた短絡的であるが、その様な議論抜きにして考えても、見学の成果は充分にあり、それは、大病院でなくとも、同じ地方の精神科を見学する事も同義の価値があるのではなかろうか。

広い視野を得るために、職場自体を移る(例えば精神科から他科へ)ということが一般的にいわれるなか、私はその方法論に固執する事だけは避けるべきであるという事を主張する。もちろん、見学という方法にこだわる必要も無く、友人から話を聞くことも一つの方法であり、書物で学ぶ事もそう。また、各種の勉強会に参加することも、広い視野を得るための一つの方法である。だが、これらは、あくまでも一つの“方法論とその結果”が存在するだけにすぎず、それよりも

※広い視野を得ようとすることの“意識”をどれだけ自己評価でき、どのような“方法論”に充当するか(したか)を吟味することができるか

ということの方がよほど重要である。
その“意識”とは、“興味”という部分から始まることを指すのかも知れないが、それは今回述べたいことの本筋から逸れるのでまたの機会に触れることにする。



☆お知らせ 当NPOのロゴDesignを請け負ってくださった

田辺 富士男氏

のCGアニメがNHK BSで放送の「デジスタ」で、選出され5月10日に放送されました。4作品の中から優秀作品として選ばれたそうなのですが、どれくらいスゴいのかというと私もよくわかりませんが、要は、むかしからTVに出ているのっぽさんや、伊藤 有壱(NHK教育「ニャッキ!」や、みんなのうた「グラスホッパー物語」CMなどでは、ミスタードーナツの「ポン・デ・ライオン」やサンスターの「Ora2」、さらには、宇多田ヒカル「traveling」のミュージッククリップ、平井堅『キミはともだち』PVなど多岐にわたって手がけるアニメーションディレクター)さんが出演している番組だそうです。スゴい!!




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