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看護師の病院定着率

投稿日:2006/02/08

先日、次の職場を探すために、めぼしい病院を当たってみた。以前にもお話したとおり、私の第一希望は三次救急(以下A病院と表現する)。しかし、そこからの返事はなく条件も私に合わない部分もあり、とありあえず二次救急(以下B病院と表現する)のある病院へ面接に行くことになった。どちらかといえば、A病院への気持ちは7割、面接に行ったB病院への気持ちは3割といった感じであった。
 B病院の面接では、看護部長との面接。リラックスできる環境を与えてくださり、自分の主張も聞いてくださった。私の恩師にも似た寛大な看護部長との印象を受けた。そこで耳にしたのが、看護師の定着率。もちろん、結婚その他諸事情で退職する看護師はいるのだが、その離職率がここ数年減少しているという。数値的にはデータを取っていないのでわからないが、ここ数年で数十人の看護師の増加がみられているという話を聞いた。もちろん、看護部長自信から自らの努力の成果であるとは口にされなかったが、私はあの看護部長の采配の成果だと率直に感じた。
 

 要は、看護師の定着率が病院の質を象徴しているということである。優れた教育システムがあり、優れた設備があったとしても、看護師の入れ替わりが激しい病院の質の向上は望めない。効率的な教育を実施していても、その教育を身につけた人間がすぐにやめ、また新人の教育をせねばならぬようならば、効率的というよりもまったく対照的に非効率な病院であるといえよう。もしそのような病院があるのならば、看護師の定着率を上げることを目指すべきである。さらに重視すべきは、新人看護師の定着率である。もう一歩踏み込んでいうとすれば、個人病院がその率の改善に取り組む必要性にも言及したい。公務員は、今の日本社会ではやや信頼性を失いかけているとはいえ、まだまだ安定職であるから、個人病院に比べると離職率も低いはずである。個人病院は、その有益性・特殊性に欠けるが故、離職率も目立つ。看護師という職業は、数の不足という理由から、病院を選ばなければすぐにでも働ける現状があるのもその原因のひとつだろう。病院経営を建て直す、もしくはさらに成長させたいと考えるのであれば、病院各システムの改善と平行して看護スタッフの定着率を上げることにも取り組むことだ。むしろそのウェイトを、定着率の向上に傾けてほしいくらいだ。
 中には、離職率を肯定的とはいわないまでも、収益性から考えてプラス面と捉えていたり、それほど重い問題と捉えていない経営者もいるかもしれない。もしそのように考えているいる経営者がいるならばその経営にはかなりの問題があろう。
 私が、病院を評価するとすれば、やはり看護師の定着率からみる。医療評価機構だの新システムの導入だのと謳っていようが、看護師が次から次へと入れ替わっているような病院の質は、分厚い金鍍金につつまれたもろい質の病院だ。
 私は、直接病院経営には関わっているわけでもないのに、ここまで経営にこだわるには理由がある。それは、

※病院経営が患者への看護に直結するから

である。当たり前のことかもしれないが、手元の細かい業務問題だけではなく、一看護師もそのあたりにもっと眼を向けてほしい。
 最後に、“看護師”の定着率に言及したのは病院でその多くを占めるのが看護師だからであることを付け加えておく。

 
 正直、一昔前のB病院の印象は良いとはいえないものであった。だが、これらの情報を含め、看護部長と色々話をした(定着率だけで気持ちが変わったわけではない)結果、9割以上B病院に行く気もちが傾いた。むしろ、「行きたい」と思うようになった。看護部長が変われば、病院もここまで変わるものかと驚かされる面接でもあった。